戦後、アメリカ文化の影響を色濃く受けながら、独自の食文化を育んできた沖縄。なかでもステーキは、特別な日のごちそうというより、喫茶店や居酒屋、家庭でも親しまれてきた身近な味だったそう。そんな沖縄のステーキ文化を40年以上にわたり伝えてきた、国際通りの老舗「牛屋」。ステーキとタコライスを“チャンプルー(混ぜる)”した看板メニュー「タコステ」と、幼い頃から暮らしの傍らにあった「コカ・コーラ」。二つの味から、異なる文化を受け入れ、自分たちの味へと育ててきた沖縄の食文化を紐解きます。
沖縄では、ステーキと「コカ・コーラ」が “日常の味”
那覇のメインストリートである国際通り。その中心部、公設市場や浮島通りへと続く入口に店を構える「牛屋 国際通り店」は、40年以上にわたり親しまれてきた老舗です。
「このあたりにステーキハウスが多い背景には、やはり戦後のアメリカ統治時代があります。当時はアメリカから肉を安く入手できたこともあって、日常でステーキを食べる文化が根づいていったんです」
※沖縄の離島生まれで、国際通りは幼い頃から訪れていたという、佐久田隆義さん
そう話すのは、「牛屋」の広報・佐久田隆義さん。那覇空港に近い国際通りは、沖縄の観光拠点として発展していくなかで、喫茶店やレストランが増え、さまざまな文化と国際色豊かな食が混ざり合いながら、この街ならではの食文化が育っていったといいます。
※国際通りが一望できる、2階の窓際のテーブル席
佐久田さんが、「ステーキと同じように、気づけば暮らしの中にあった」と語るのが、「コカ・コーラ」。「牛屋」が国際通りで店を始めた頃には、「コカ・コーラ」はすでに沖縄の日常に溶け込んだ飲み物でした。
「沖縄で民間向けにコカ・コーラが発売されたのは、本土より6年早い1951年。僕自身も小さい頃から、コカ・コーラが身近にありました。昔は“ファミリー瓶”という1リットルの大きな瓶があって、それを家族みんなで飲むのが当たり前でした。ねじ込み式の蓋だったことも、すごく印象的でよく覚えています」
※日本において、「コカ・コーラ」が最も早く市民へ浸透したのが沖縄でした
ステーキもタコライスも。“チャンプルー”した一皿
そんな沖縄の食文化を40年以上にわたり伝えてきた「牛屋」のルーツは、実はステーキハウスではなく、軽食とコーヒーの店。当時はまだ珍しかったドリップコーヒーと軽食の店が評判を呼び、国際通りに2店舗目となるサンドイッチハウスを出店。1970年代にその店でステーキを提供しはじめたところ、ステーキ人気に火がつき、姉妹店として現在の「牛屋」を出店したのだそう。
「沖縄では、ステーキって意外と身近なんですよ。居酒屋にも喫茶店にもあるし、僕が生まれた離島でもいまだに喫茶店でステーキが食べられる。家庭でも輸入肉が安価で手に入るようになっていたので、『今日の晩ご飯はステーキね』というのが、贅沢なことではなかったんです」
※「牛屋」では県産和牛、石垣牛、アグー豚などさまざまな肉を良心的な価格で提供している
「牛屋」で一番人気のメニューは、「タコステ」。食べやすくカットしたステーキとひき肉、チーズ、野菜が重なるタコライスを組み合わせた、ボリューム満点の一皿です。
※200gのカットステーキとスパイスの風味豊かなタコライスを盛り合わせた、「タコステ」。「タコステ」は、レディースプレートもあり
「喫茶店でステーキを食べる沖縄ならではの文化と、喫茶店といえばワンプレートで出すというスタイルの融合から生まれたメニューですね。ワンプレートの方が食べやすいし、頼みやすいというのもポイントです。ステーキもタコライスもともに人気があるので、それなら、沖縄らしく全部“チャンプルー”して、ガッチャンコしよう、と(笑)」
戦後に広がったステーキ文化と、沖縄で生まれたタコライス。そして喫茶店のワンプレート文化。異なる背景を持つ味が一枚の皿の上で混ざり合った「タコステ」は、まさに沖縄らしい“食文化”です。
※毎日磨き続けているカットナイフは、3代目。長年使い込むうちに刃が削られ、今ではもとの2/3ほどの大きさに
また、「牛屋」では老舗ステーキハウスならではの独自の仕入れルートがあり、創業時から長年信頼を寄せている地元業者から肉を仕入れています。牛肉は脂を落としすぎれば肉本来のおいしさまで損なわれてしまうため、筋や脂身を一枚ずつ見極めて下処理するのが「牛屋」流。
柔らかくも、肉々しい味わいが感じられるステーキには、創業当時から変わらぬ醤油ベースのオリジナルソース。「誰が食べても、何度食べても飽きない味わいを目指しています」と佐久田さん。
※「沖縄焼きそば」はナポリタンを思わせる味わいながら、沖縄そばのコシや太さが意外なおいしさ
さまざまな文化を取り込みながら育まれてきた沖縄の味は、「牛屋」のほかのメニューにも息づいています。そのひとつが、沖縄そばの麺にポークを合わせ、ケチャップで味付けした「沖縄焼きそば」。沖縄では、焼きそばといえばケチャップ味が主流だった時代もあったそうで、こちらも郷土色豊かな一品です。
※老舗ステーキ店らしいカウンタースタイル。奥には、ステーキや焼きそばがつくられる鉄板が
さらに、佐久田さんがおすすめするのが、「タコステ×『コカ・コーラ』」の組み合わせ。
「ステーキの脂は『コカ・コーラ』の爽快感ですっきりと。タコライスのスパイシーさは『コカ・コーラ』の甘さがまろやかにしてくれます。お肉を食べて、『コカ・コーラ』を飲んで、タコライスを食べて、また『コカ・コーラ』。そうすると、次のひと口がさらにおいしく感じられるんです」
※「牛屋」をはじめ、数店舗の広報を担当する、佐久田隆義さん
「コカ・コーラ」は冷凍庫でキンキンに冷やしたグラスで提供。熱々のステーキ、スパイスの効いたタコライス、冷たい「コカ・コーラ」を交互に味わえば、それぞれのおいしさが心地よく重なります。
さらに現在「牛屋」では「コカ・コーラ」を使ったさまざまなドリンクを提案するフェアを開催しています(終了時期未定)。「『シークァーサーコーク』などノンアルコールもあるのでお子さまにも楽しんでいただけますよ」(佐久田さん)
※店内には歴史を感じさせるものばかり。「コカ・コーラ」の看板やネオン、グッズも随所に
※フェアでは、地元のお酒と「コカ・コーラ」を合わせたりと、コーラの新しい飲み方が広がります
アメリカ文化の影響から根づいたステーキに、沖縄生まれのタコライス。昔から親しまれてきた泡盛にも、身近にあったコークを合わせる。異なるルーツを持つ味を柔軟に掛け合わせ、自分たちのおいしさへと育てていく。そんな沖縄の食文化の懐の深さが、「牛屋」の一皿、「コカ・コーラ」の一杯にも映し出されていました。
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