沖縄本島の中部、北谷町美浜。「アメリカンビレッジ」の名で親しまれるこのエリアの海沿いに、「ホライズンカレーワークス」はあります。看板の石焼きチーズカレーに添えられるのは、別皿の自家製ラー油。この組み合わせが生まれた理由や、毎年12月にオーナーがサンタクロースになるわけを、佐藤彰延さんに聞きました。
誰も海を見なかった町で、海のそばを選んだ理由
※ホライズンカレーワークスがあるのは、色とりどりの建物が並ぶ美浜のこの一角。正面右側に見えるのは、一年を通してクリスマスをテーマにしたショップです
オーナーの佐藤彰延さんがこの店を開いたのは、今の店舗が入るディストーション シーサイドビルが完成した2015年頃のこと。それまでは、那覇市内で別のバーを営んでいたといいます。転機になったのは、同年に開かれた音楽フェスです。運営を手伝っていた佐藤さんは、自身のバーで出していたカレーのブースを出すことに。これが大きな評判を呼んだことで、「これなら勝負できる」という手応えをつかみ、このカレーを看板にした店を出すことを決意します。
※オーナーの佐藤彰延さん。アメリカンな雑貨に囲まれた店内で、10年の歩みを聞かせてくれました
店を開く場所については、すでに狙いを定めていたといいます。
「生まれは内地の人間なので、沖縄でお店を出すなら内地の人が喜ぶような、海沿いで沖縄をたっぷり感じられる場所を狙っていたんです。ただ、当時の美浜は、海は決して主役ではありませんでした。施設の駐車場は道路を挟んだ反対側にあったため、美浜に来て、海があるのを知らないで帰る人がたくさんいたと思いますよ」(佐藤さん)
それから10年。テトラポットと防波堤があるだけだった海沿いは、今ではボードウォークが整備され、お店自慢のテラス席は目の前に広がる海と空を独り占めできる、美浜でも指折りの特等席になりました。
※海に向かって一列に並ぶテラス席。日が傾く頃には、正面に沈むきれいなサンセットを眺めることもできます
カレーの辛さを決めるのは、食べる人
お店の名物は、石焼きチーズカレーです。熱した石鍋に注いだカレーの上にたっぷりのチーズをのせ、バーナーで一気に炙り上げる一皿。そして、この一皿に欠かせないもうひとつの主役があります。それは、別皿で添えられる自家製のラー油です。
※名物の石焼きチーズカレー(1480円)。左に置かれているのが、この店の自家製ラー油です。スプーンですくって、好きなだけかけられます
カレーにラー油。なかなか思いつかない組み合わせですが、そのきっかけは沖縄の外からやってきました。
「沖縄で食べるラー油が流行していた頃、横浜の中華料理店で料理長を務める友人から連絡が来て、『沖縄のラー油が流行ってるけど、あれは飽きられちゃう。ラー油ってやっぱり辛くないと』って言うんですよ。それで、自分がつくってるラー油を送ってきてくれたんです」(佐藤さん)
※横浜から届いたレシピをもとにつくる自家製ラー油。辛さを引き出す工程においしさの秘密があるそうで、詳しくは教えてもらえませんでした(笑)
それは花山椒をしっかりと効かせた、しびれる辛さのラー油でした。何に合わせようかと考えていたとき、佐藤さんの目の前にあったのが、当時バーで出していたカレーだったといいます。
「カレーのトッピングというよりも、辛さのブースト役にすごくいいんじゃないかと思いついたんです。カレーって好きになると、どんどんスパイシーな味を求めてしまう。でも、それだとお年寄りや子どもは食べられない。だからカレーはあえてマイルドにつくり、辛さはラー油で足してもらう。そうすれば、どちらの好みにも応えられるんじゃないかって」(佐藤さん)
辛さの最後の一手は、お店ではなく、食べる人の側にある。かける人は、おかわりするほどたっぷりとかけていくそうです。
※ひとかけで、マイルドなカレーが一気にしびれる辛さへ。辛さの調整は、食べる人しだいです
「コカ・コーラ」の爽やかな炭酸が引き立てる、2皿の旨み
この「食べる人に合わせる」という考え方は、メニュー全体にも及んでいます。お酒を楽しむお客様が中心だった店を、家族みんなで食事を楽しめる店にしたい。そう考えた佐藤さんは、少しずつ料理の幅を広げていきました。
※店頭に並ぶメニュー表。カレーのほかに、ステーキプレートやパスタ、スイーツにドリンクまで。キッズカレーも用意されています
なかでも、いま特に人気なのがガーリックシュリンプとクロッフルです。ガーリックシュリンプは、単品では看板のカレーに迫る人気ぶり。一方のクロッフルは、コロナ禍で夜の営業ができなくなったとき、「夜がだめなら朝をやろう」と朝営業を始めたことから生まれた一品でした。
そしてこの2皿に、佐藤さんがおすすめする相棒が「コカ・コーラ」です。
まずはガーリックシュリンプ。にんにくとバターをまとった海老は、しっかりと濃い味わいです。
※にんにくとバターをまとったガーリックシュリンプ(1650円)。皿に残るソースまでおいしい一品には、氷で美味しく冷やされた「コカ・コーラ」を
「やっぱり味も濃いんでね。実際、かなり合うと思いますよ。シュリンプの油っこい感じを、『コカ・コーラ』の爽やかな炭酸がさっと流してくれるような感じがあります」(佐藤さん)
もう一方のクロッフルは、甘い一皿。一見すると、炭酸との相性は想像しづらいかもしれませんが、佐藤さんによれば、ここでも「コカ・コーラ」がいい相棒になってくれるといいます。
※チョコベリーソースと生クリームをのせたクロッフル(1200円)。バターの効いた生地の甘さに、「コカ・コーラ」の炭酸がよく合います
「クロッフルはバターがふんだんに使われていますから、その豊かなコクを、炭酸の刺激がすっとリセットしてくれますよ」(佐藤さん)
では、実際にこのペアリングを注文するのはどんなお客様なのでしょうか。
「お酒やビールを飲めない方が多いですね。車でいらっしゃる方も多いので。やっぱり喉越しがいいですから、食事に合う一杯として選ばれていると感じますね」(佐藤さん)
12月、この店にはサンタがやってくる
そんなホライズンカレーワークスには、もうひとつユニークな一面があります。それは、毎年12月になると、店内が本格的なクリスマスの装飾に彩られること。実はデポアイランドシーサイドには、一年を通してクリスマスをテーマにしたショップが入っており、この一角は季節を問わず、どこか賑やかな空気に包まれているのです。
※クリスマスの装飾に包まれた店の入口。ガーランド、オーナメント、星、電飾と、入口をクリスマス感が包み込みます
なかでも佐藤さんの装飾へのこだわりは強く、館内のテナント同士が自主的に競う装飾コンテストでは、3年連続で優勝を果たしているほどです。そこまで手をかける理由を尋ねると、返ってきたのは店への愛着でした。
「お店って、一度つくり上げると、それを大事にしたいじゃないですか。だから、店内に新たに飾れるタイミングってなかなかないんですが、クリスマスだけは違うんですよね。思いきりきらびやかにできる。だから毎年、喜んでやらせてもらっています」(佐藤さん)
※店内の装飾の一角。ガーランドの中にケーブルを隠すというこだわりぶりで、見えるのは光だけです。赤いネオンも、いつのまにか飾りの一部になっていました
そして、この時期にはもうひとつ、佐藤さん自身にも大きな変化が訪れます。
「せっかくの時期ですから、店の中だけじゃもったいないなと思って」(佐藤さん)
なんと、佐藤さん自身がサンタクロースになるのです。真っ赤な衣装を身にまとい、この辺りの子どもたちにお菓子を配って回る。毎年のことなので、待っている子もいるといいます。
※サンタクロース姿の佐藤さん。毎年12月、この街の子どもたちにお菓子を配って回ります(写真提供:ホライズンカレーワークス)
「やっぱり、クリスマスのサンタクロースといえば、『コカ・コーラ』ですから」(佐藤さん)
サンタクロースの赤い衣装が世界中に定着する大きなきっかけとなったのは、「コカ・コーラ」のクリスマス広告でした。その話を、佐藤さんは楽しそうに話してくれました。
海のそばに店を構えて10年。辛さを食べる人に委ね、家族みんなが楽しめるメニューを広げ、12月にはサンタの衣装をまとう。ホライズンカレーワークスは、いつもこの街を訪れた人たちとまっすぐに向き合っていました。
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